子どもに合った教育を受けさせたい…!
世界にはさまざまな教育法があります。子どもの特性を伸ばす教育法、学力を伸ばす教育法、特定のスキルを伸ばす教育法……。それぞれメソッドは違いますが、どれもが子どもの将来を豊かにする目的を持っています。
しかし親としては、選択肢が多すぎて「どれがうちの子に合うの?」と迷ってしまいますよね。最良の選択をするためには、教育法ごとの特徴やメリット・注意点を理解する必要があります。数ある教育法の中で今回ご紹介するのは「モンテッソーリ教育」というものです。
モンテッソーリ教育は、子どもの主体性や個性を伸ばす教育法として知られています。今回は、モンテッソーリ教育の特徴や注意点、子どもがモンテッソーリ教育に合っているかどうかを知るためのポイントなどをご紹介します。
モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育は、日本でも取り入れている施設が多い教育法の一つです。育児や教育に関心を持っている人は、一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
ここでは、モンテッソーリ教育の概要をご紹介します。特徴を理解し、子どもに教育を施す際の判断材料にしていきましょう。
子どもが持つ自己教育力を発揮させる教育法
モンテッソーリ教育は、1907年にマリア・モンテッソーリという医学博士・幼児教育者が考案した教育法です。その最大の特徴は、子どもが持つ「自己教育力」を発揮させること。自己教育力とは「子どもには自分で自分を育てる力がある」という考えに基づいた能力となっています。
モンテッソーリ教育は、以下の5つの教育分野に分かれます。
- 日常生活の練習……子どもが自分の意思で体を動かす能力を学ぶ
- 感覚教育……意識的に感覚器官を使った遊びをする
- 言語教育……「読む・書く・話す」を中心とした力を身につける
- 算数教育……教具を用い、数量について手で扱いながら覚える
- 文化教育……音楽・美術・地理・体育・動植物など、言語と数以外に関わる能力を育む
モンテッソーリ教育においては「自立しており有能で、責任感があり、生涯に渡って向上心を持ち続ける人間」を目指すことが目的とされています。自己教育力は、その目的を総合的に養うための子どもの潜在能力なのです。
子どもが能動的に学習する環境が重要
モンテッソーリ教育を取り入れている施設では、子どもが自ら選べる学習法が豊富に用意されています。積み木や絵本のような教具の数・種類が多く、子ども自身が「楽しそう」「やってみたい」と興味を持てる環境が整えられているのです。
また、モンテッソーリ教育では感覚器官を育てるために、あえて子ども向けではない「本物の品」を用意する傾向に。例えば、お皿や器などはプラスチックではなく陶器でできたものを利用することで、「落としたら割れてしまう」とか「慎重に取り扱わねばならない」などという感覚を養います。
子どもの自主性を尊重し、大人は見守る
モンテッソーリ教育では、子どもの自主性を促すために、周りの大人は子どもを見守るのが基本です。大人や施設側がやらせたいことを押しつけるのではなく、子どもが自ら選択して学び、成長する過程をサポートしていきます。
子どもを注意深く観察しながら、本人がやりたいことをかなえるために必要な教具や情報を提供するのです。あくまで尊重しているのは子ども自身の興味や自主性であり、この独自の教育方針のために、モンテッソーリ教育の講師を育成するための専門資格も確立されています。
子どもがモンテッソーリ教育を受けるメリット
ここでは、子どもがモンテッソーリ教育を受けるメリットを4つご紹介します。モンテッソーリ教育では子どもの自己形成が促進されるため、幼い頃から自分らしさを獲得できることが特徴です。メリットを理解し、子どもの特性と照らし合わせながらモンテッソーリ教育を活かしてみましょう。
持ち前の個性が伸びる
モンテッソーリ教育の大きなメリットとして、子どもが生まれ持った個性を伸ばせることが挙げられます。私たちは一人ひとり違う人間であり、興味や関心の対象も違います。価値観や感性の違いは子どもの頃から存在しており、画一的な教育環境ではそれぞれの個性を伸ばすことは困難です。
モンテッソーリ教育では子どもが遊びや学習内容を選択できるため、やりたいことを存分に楽しめる環境が整っています。「好き」や「得意」を伸ばすことで自分らしい能力が育まれ、個性が尊重されることで自信を感じられるようになるでしょう。
自主性が身につき、物事に積極的になりやすい
モンテッソーリ教育では、物事への自主性が養われることがメリットです。例えば、創作活動に興味がないのに「今日は〇〇の絵を描きましょう」と言われても、やる気は起こらないもの。しかし「今日は自分の好きなことをしていいですよ」と言われると、物事へのモチベーションが高まります。
好きなことを好きなだけ、自分の方法で取り組める時間に恵まれるため、物事への自主性が身につき積極性を獲得できるのです。これは、子どもの興味や関心を何よりも尊重しているモンテッソーリ教育ならではの魅力だといえるでしょう。
集中力が養える
モンテッソーリ教育では自分の好きなことに没頭できるため、集中力が養われます。例えば、大人でも嫌いな仕事だとすぐに集中力が切れてしまいがちですよね。しかし、得意分野や趣味などであれば、何時間でも休まずに取り組めるほどの集中力を発揮できることもあるでしょう。
子どもの学習においても同様で、目の前のことに長時間集中する機会に恵まれると、物事に専念する感覚を鍛えられます。モンテッソーリ教育によって育まれた集中力は、将来的に学業や仕事においても大きなメリットを発揮してくれるでしょう。
自分らしい考え方や過ごし方を獲得できる
モンテッソーリ教育では、子どもが自分らしい考え方や時間の過ごし方を理解できるようになります。
子どもの日常は、大人と比べて自由なように見えて、実は大きく制限されています。一般的な幼稚園や保育園でも、子どもが過ごす環境は先生や保育士の指示に左右されるでしょう。例えば「自由に絵を描きましょう」という指示は一見すると自由を与えられているように見えますが、実際には「絵を描かねばならない」という不自由が前提としてあります。
一方、モンテッソーリ教育では、絵を描く・描かないすらも子どもが自分自身で選べます。自由に与えられた時間の中で、自分がどのように過ごすのかをすべて選択できるのです。好奇心や興味に素直に従える環境で、自分らしさと日々対峙できるためスムーズな自己形成が進みます。
子どもがモンテッソーリ教育を受けるデメリット・注意点
ここでは、子どもがモンテッソーリ教育を受ける際のデメリットや注意点についてご紹介します。一見すると自由・個性・主体性とポジティブなキーワードが多いモンテッソーリ教育ですが、特殊な教育法にはそれ相応の注意点もあるものです。デメリットに留意した上で、子どもに合うかどうかを慎重に検討しましょう。
協調性が身につきづらい
モンテッソーリ教育では、協調性が身につきづらい傾向にあります。なぜなら、モンテッソーリ教育において「みんなと力を合わせてがんばること」は比較的軽視されているためです。これは、周りと手を取り合える力よりも、個人が主体性や行動力を持って歩める力を養う教育法であることに起因します。
そのためモンテッソーリ教育を受けた子どもは、周りと協力するべきシーンでも「一人でやった方が効率的では?」と考えることも少なくはありません。よくも悪くも個人主義的な考えを持ちやすい傾向にあるため、その点に関しては十分注意したほうがいいでしょう。
集団行動が苦手になる可能性がある
モンテッソーリ教育を受けた子どもは、集団行動に苦手意識を持つ可能性があります。一般的な教育施設では、大人が時間の過ごし方を決め、子どもたちはその指示に沿って行動します。その中でチームプレーを求められたり、周りの子たちと同じように行動したりする力を身につけるのです。
しかし、モンテッソーリ教育では個人レベルで子どもの主体性を尊重するため、無理に他の子どもと遊ばせることはありません。一人で集中することを望む子どもの場合は安易に周りと関わらせないようにするため、施設外で集団行動させようとすると、うまくいかなくなるケースがあるのです。
運動不足になりやすい
運動不足に陥りやすい傾向にあることも、モンテッソーリ教育の注意点の一つ。例えば一般的な教育施設では、外遊びと称して体を動かす時間が設けられます。室内でも運動要素のあるレクリエーションを取り入れるので、子どもに必要とされる運動量が確保できるケースが多いでしょう。
それに対して、モンテッソーリ教育では、子どもが求めていなければ無理に運動させることはありません。強制的に体を動かすような時間はなく、子どもが室内で読書していたければ何時間でも許容するのです。そのため、子どもによっては適切な運動量を確保することが難しく、施設外でのエクササイズが必要になる場合もあるでしょう。
子どもらしい無邪気さが減る可能性がある
モンテッソーリ教育を受けると、子どもらしい無邪気さが減ってしまう可能性があることもデメリットとして挙げられます。モンテッソーリ教育は自主性を持った子どもを育てる教育法のため、子どもが大人のような独立心を持った性格になってしまう傾向があるのです。
精神的に他人に依存しない心は、将来に渡って心強い武器になります。しかし、子どものうちから独立心を持ちすぎると、年齢に不相応な達観した考え方を持つケースも少なくはありません。子どもならではの無垢な純粋さは後から取り戻せないため、注意点として覚えておいたほうがいいでしょう。